「川と出会った頃のこと」 菊池 静香(NPO法人 水環境北海道/同志社大学大学院)

黒部川:黒四ダムへ行くトロッコから撮ったもの。水の色がエメラルドグリーンで感動!

まずはお詫びから
順調に引き継いでいたコラムを中断させてしまいました。7月下旬に「川の日」WS事務局の堺さんから依頼を受けた際「私で良ければいいですよ〜」なんて軽く答え、8月上旬までは覚えていたのですが、その後すっかり忘れてしまいました。先日、犬山さんからの「韓国レポートを川の日HPに載せました」メールでどれどれとアクセスして…ガ〜ン!記憶が蘇りました。大変申し訳ありません。
さて、早く取りかからなければ、今夏の現職での活動状況でも…と思ったのですが、せっかくのコラム、私的に書かせて頂きます。

原体験はありません

私は、北海道夕張市で生まれ育ちました。山に囲まれたのどかな田舎の綺麗な川で、小さい頃は良く川で遊びました…と続けば何とも美しいのですが、実は、幼稚園の頃こそ祖父母の家の裏に流れる小さな川で、サンダルを履いて兄と一緒に水遊びをした記憶がありますが、身近な川は崖っぷちを流れる岩盤の急流河川だったこともあってか、ほとんど遊んだことがありません。親や学校から注意された覚えもないのですが、単に興味がなかったのか、遊ぶ対象ではなかったのか、ほとんど関わりがありませんでした。
ここからが始まり
川を意識したのは大学に入ってからです。高校卒業後、横浜にある関東学院大学の土木工学科に在籍しましたが、3年次に受講した「河川工学」がきっかけとなりました。地域の歴史・文化・人とのかかわりをベースにした宮村忠先生の河川学に興味を持ち、以後、大学院まで河川を専攻することとなったのです。
卒業論文に関連し、全国様々な川をめぐる機会が与えられ、富山の黒部川、山形の最上川、広島の太田川…等々、主要河川をポイント的でも見ることができました。ぼんやりと景色なんかは覚えているものの、視察しながら教えて頂いたことはほとんど消えてしまいましたが、まちの雰囲気と人々と景観と地形とその他諸々、全て折り合い歴史が積み重なって一つの「川」が存在すること、人間と同じでみんな顔が違いそれぞれに悩みを抱えていること等、肌でしっかり実感しました。
地形図を持って川を歩くこと(地形図は色を塗る)、とにかく現場を見ること、そうでなければ川は判らないよ、といつも教わりましたが、川歩きで今でも印象深いのは、1993年4月、自然復元研究会だったでしょうか…ちょっと自信がないのですが、長野で開催された大会で日本河川開発調査会・故石崎正和さんに同行させて頂き、千曲川支川犀川を歩いた時のことです。
何を見ても何を聞いても新鮮で、「この構造物は何のためにあると思う?」、「この地点での問題点は何だと思う?」との問いにタジタジ、カメラを向ける方向に「何でこんなアングルで撮っているのだろう…」と思いながらも真似をしてシャッターをきり、必死に後を追ったものです。新潟水辺の会の相楽さん、大熊先生他たくさんの方にお会いできたこともあり、この時のことは今でも忘れられません。
これがきっかけとなり、隅田川、多摩川等、機会があるごとに見てまわりました。また、よこはまかわを考える会・宮村河川塾を通しお会いした森さん他皆様にも大変お世話になり、はじめてホタルも見たものです。
海外に行く機会にも恵まれ、1994年6月には石崎さん、山道さんらに同行させて頂き、中国の蘇州・無錫他観光地ではない村々をめぐった水郷都市の視察も、綺麗・汚いでは判断できない、否定できない水文化、人間と川との繋がりを強烈に感じました。
これら学生時代の貴重な体験が、その後も影響を与えたことは間違いありません。
でも「いい川」って…?
蘇州の水路:家裏にある水路では、食器を洗ったり野菜を洗ったり…
現在はNPO法人水環境北海道事務局の専従スタッフとして、千歳川流域を主なフィールドに様々な活動を実践しています。ここでも素晴らしい方々に囲まれ何とかやっておりますが、幼少期の“原体験”を持たずにこのような活動に関わることへの違和感、そして、「いい川」とは何か、人や自然やまち全体がどうであれば「いい川」になるのか、様々な情報にふれても未だに良く判らないなあ…というのが本音です。自分の言葉で語れるものは、ほとんど無いに等しいかもしれません。きっと、「川の日」WSにエントリーしても、皆さんの熱い思いには敵わないんだろうなあ。
学生時代に得た感動や思いをずっと探究し続けていれば、ちょっとは成長できたのかもしれませんが、そんな感性はどこかへ飛んでしまい、知らない間に「仕事のしやすさ」なんていう物差しで川と接してしまった結果か…このコラムを書きながら、ふとそんなことを思いました。反省!
ここらでもう一度、自分にとっての原点に戻らなければと思う今日この頃、もう一つの肩書きである学生としても修行しなければ。
次回は水環境ネット東北の小山田さんです。

他己紹介:
 多摩川を経て、東北でも益々御活躍の水環境ネット東北の小山田さん。どこに行っても頼りになる人材で、子ども達からも「川のお兄さん」として尊敬されていることでしょう。熱い思いを自由に語って頂きたいと思います。


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